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【読書の秋〜本を読もう!】⑤笑いのカイブツ/ツチヤタカユキ

目次

 

1.たぶん、今年1番の衝撃作!

 

今回はツチヤタカユキさんの「笑いのカイブツ」を読みました。

 

笑いのカイブツ (文春文庫)

笑いのカイブツ (文春文庫)

 

 

まず、ツチヤタカユキさんを知らない方も多いことでしょう。

 

ツチヤさんは、大阪出身で、伝説の葉書職人として知られる人物で、着信御礼!ケータイ大喜利』『オードリーのオールナイトニッポンなどの番組にとてつもない量の投稿をして、その多くが採用されたことで知られています。

 

実際にオードリーの若林さんとはプライベートでも交流を持ち、生活を共にしていた時期もあるようです。

 

肩書としては、元放送作家、元構成作家ということになるでしょう。

 

2.「笑いのカイブツ」の内容は?

この作品は、ツチヤさんの半生を題材にした私小説です。

 

小説なので、多少創作を入っているかと思いますが、そのおおよそが事実だとすると、本当に凄まじい人生を歩んでいることになります。

 

ツチヤさんは、かなり早い段階から自殺願望に近いものを持っており、自分の存在理由を確認するために、お笑い、そして投稿にのめり込みます。

 

そして投稿で存在感を高め、結果を残していくにもかかわらず、笑いを追求するあまり周囲とうまくコミュニケーションが取れず、どんどん孤立していくのです。

 

 

例えば、1日2000個のボケ作りを自分に課し、ひたすらそれをノートに書き殴る…そんなことを何年も何年も続けています。

 

友達と呼べる人間もほぼおらず、社会的立場からいえばフリーターとニートの間といったところ。

 

そこまで自分を追い込んで、そもそもツチヤさんは何を目指しているのか。本作を読んだ人がまず感じるのはそこではないでしょうか。

 

3.好きなこととは「業(ごう)」である

ツチヤさんがここまで笑いに入れ込んでいるのは、好きだからという単純な動機を超えています。もはや「業≒宿命」の次元にまで達しているのです。

 

ツチヤさんの行為は、厳しい修行を自らに課した修験者のようであり、自分に対しても世の中に対しても、あらゆる虚飾を許さない。

 

……このような生き方が正しいか間違っているのか、それは何とも言えません。

 

しかしこの本を読んだ人は「自らにここまでの厳しさを向けたことがあるのか」と、思わず姿勢を正したくなるのではないでしょうか。

 

好きになるということが、もはや業で、それを本当の意味で追求するというのは「カイブツ」になることなのかもしれません。

 

読んだ人の数だけ感じ方はあるかと思いますが「一読の価値はあるまぎれもない名著」と言って良いかと思います。