【読書の秋〜本を読もう!】③平凡/二葉亭四迷
目次
1.今回は二葉亭四迷!
いつの間にか12月に入ってしまいましたが、無理矢理、読書の「秋」ということで続けたいと思います(笑)
さて二葉亭四迷は、日本の近代文学を代表する作家の1人として有名ですよね。
名前の由来が、父親から勘当されて言われた「くたばってしまえ(≒ふたばていしめい)」というのも面白いですね。
(*実際は、父から言われたというのは俗説で、自分自身に対していった言葉が由来だそうです)
2.「平凡」ってどんな話?
そんな彼の代表作の1つである「平凡」を読みました。
本作では題名通り、平凡なある男の人生が包み隠さず描かれます。
今年39歳になる下級官吏が人生を振り返るのですが、幼少期に衝撃的な形で愛犬が死んだり、上京するも居候の身として肩身の狭い思いをしたり、その家の娘さんに恋をするも破れ、後に文学で生活できるようになって女性に夢中になるも、それで親の死に目を逃す…という、なかなかの内容。
平凡な人生と言えば平凡ですが、ちょっと「人間失格」にも近いテイストが感じられる作品とも言えるかもしれません。
3.「私」であることの苦しみ
本作は結構長いですし、一体どこが面白いの?と感じる方もいらっしゃることでしょう。
実は、近代文学の大きなテーマとなっているのが「私であることの苦しみ」です。
大切なものを失い、それを受け止めなければならない苦しみ。
恋をする苦しみ。
欲望の苦しみ。
取り返しのつかないことをした苦しみ。
それらがはっきりと「私」という主体に通じて描かれるようになったのが「近代文学」なのです。
そして平凡が書かれたのは1907年(明治40年)で、今から100年以上前のことなのですが、当時の人々が、今の私たちと同じ苦しみ・悩み・後悔を抱えていた事に気づかされます。
テクノロジーが進歩して、表面的に時代がいくら変わっても、私たちそのものはそう大きく変化してはいない。
その事実に対して、私たちは深く感動することになります。
本作が書かれた当時としては、その内容は平凡であったかもしれません。
しかし100年以上経過した今、その平凡さが、現在の私たちに多くの気づきをもたらしているように思えます。