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アラサー男があなたに贈る現代版「徒然草」(つれづれぐさ)

【400万人以上が苦しむ?】山口達也さんから見えるアルコール依存症の話

目次

   

0.山口達也さん、バイク事故で逮捕

山口達也さんが、 9月22日に、酒気帯び運転で物損事故を起こし、逮捕されました。

 

news.yahoo.co.jp

 

山口達也さんは、ジャニーズの人気グループ・TOKIOに所属していましたが、2018年に事務所を電撃退所。その原因は、起訴猶予処分になった強制わいせつ容疑で、この時すでにアルコール依存症であることを匂わせる報道も出ていました。

 

***

 

今回の逮捕によって「山口元メンバーは、支えている人を裏切った」「失望した」との論調もあるようですが、これはちょっと難しい部分かと思います。

 

それは、お酒の飲み過ぎを「自己責任」と言えるか、という問題を含むからです。

 

1.アルコール依存症の現状

さて、厚生労働省の「アルコール依存症の詳細」に関するページを見ると、国内でアルコール依存症の疑いのある人が440万人、治療が必要なケースは80万人いると書かれています。

 

www.mhlw.go.jp

 

多量飲酒の人は860万人、アルコール依存症の疑いのある人は440万、治療の必要なアルコール依存症の患者さんは80万人いると推計されています

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

 

これだけの患者さん(もしくは予備軍)を自己責任で切り捨てられるかどうか。

 

最初にお酒に手を出したのは自己責任かもしれないけれど、お酒の量が増えて中毒・依存状態になり、自分の意思ではどうにもならない…という段階になれば、もう自己責任とは言えないのではないでしょうか。

(というか、そんな状態の人に自己責任を求めて、裏切られて、失望して、その人の人格を疑ったり否定したり…というのは無意味だし、全然建設的じゃありませんよね)

 

少なくとも、欧米ではアルコール依存症をれっきとした治療対象とみなし、それをカミングアウトするための環境や、治療のためのプログラムが整備されています。

アメリカでは1982年のベティ・フォード・センターの設立が転機になった、とも言われているようです)

 

それでは日本はどうか。

 

www.ncasa-japan.jp

 

精神科で専門治療を受けている患者数は4万9000人程度しかおらず、多くの治療を必要としている患者の存在が明らかでありながら、実際には依存症治療につながっていないことがわかります。

このように多くの患者が専門治療を受けるべきであると指摘されているにもかかわらず、実際に精神科の門をたたく人が非常に少ないのはどうしてなのでしょうか?

なぜなら、日本人にとってアルコールの問題を抱えているということは「恥ずかしいこと」「意志の弱い性格のせい」とみなされ、その人自身の人格の問題ととらえられる傾向があるからです。このように依存症に対しての正しい理解や対応は進んでおらず、世間一般には厳しい視線が注がれることがわかっているため、なるべく人から知られないようにしようという気持ちが働くことがほとんどです。

実際に、例えば芸能界などで活躍する有名人が依存症であるとわかると、社会的な制裁を求めるようなネガティブな対応を多く見聞きします。

(依存症対策全国センター)

 

つまり、今の日本のアルコール依存症の方々の現状はと言うと…

①恥ずかしいから相談も治療もしにくい(周囲に相談しても「意思の問題だ」「甘えだ」と言われて理解されないことがある。もしくはそう反応されると恐れている)

②アルコール依存が深刻化する(離婚や失業などで一気にアルコール摂取量が多くなることも)

③専門家に相談するときはすでに重症となっている(あるいはすでに何らかの問題を起こしたあと)

④社会復帰への道のりが遠く険しいものになる

 

このような状況だと、アルコール依存症の方のご家族もかなり大変だと予想されます。

 

2.アルコール依存症の有名人は多い

ちなみにアルコール依存症が、どれだけ大変か、経験がないという方がほとんどだと思います。

 

そんな方は、漫画家・ 吾妻ひでおさんの『失踪日記の「アル中病棟」の章を読むと、その深刻さがよくわかるのでは…と思います。

失踪日記【電子限定特典付き】

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何度も嘔吐して、どう考えても命に関わるだろう…ということになっても、お酒がやめられない。 アルコールによって消耗しきって、何もできない。身近に合法で売られているものがこんなに恐ろしいのか…と感じてしまいます。

 

ちなみにアルコール依存症で苦しまれた有名人を上げると、漫才師の横山やすしさん、漫画家の赤塚不二夫さん、俳優の萩原流行さん、ギタリストのエリック・クラプトン、俳優のブラッド・ピット、俳優のダニエル・ラドクリフさんなど、かなり多くいらっしゃることがわかりますね。

 

3.かつて会ったアルコール中毒のおじさん

 

ちなみに自分の体験なのですが、自分が10代の時に働いていたコンビニには、近くの病院からこっそりお酒を買いに来るアルコール中毒患者のおじさんがいました。

 

そのおじさんはガリガリに痩せており、気さくで優しい人だったのでした。店員さんに笑顔を向けてくれる人でしたが、その笑顔に疲労感というか、常に哀愁を漂わせていたのが印象的です。

 

入院用の服装のままお酒を買いに来ていたりしたのですが、ある時からぱったりと来なくなりました。

 

無事退院できたのか、あるいは別の病院や療養所に移ったのか、あるいは容体が悪化して…15年近く経った今でも、たまに気になることがあります。

 

4.アルコール依存症は「甘え」じゃない

とにかく、アルコールの量が多くて悩んでいる方、もしくはそのご家族は、早い段階で専門家に相談することが重要。「意思の力で何とかなる」「お酒の飲み過ぎは甘えだ」などと思わない方が良いです。

 

それから社会が変わるのは難しいかもしれませんが、「自己責任論」という厳しさが少しでも和らげば、今大変な思いをしている人にとっても、もう少し住み良い場所になるのかな…という気もします。