「文系・イズ・デッド」の話
1.
自分は本が好きで、大学も文系に進んだ。そして、今はライターである。
そんな、文系に深くコミットしてきた自分が30歳を目前にして思うのは「今や文系の学問は死んだ」ということだ。オワコンなのである。
いま高校生の方で文系の学部(文学部、経済学部、社会学部、外国語学部、法学部、経済学部、経営学部、商学部、国際関係学部…)へ進もうとしている方は、よく考えたほうがいい。
2.
文系の学問はなぜオワコンなのか?
それは20世紀後半〜21世紀にかけて、科学やテクノロジー、ITなどの分野でしかイノベーションが起きないことが、はっきりしたからだ。
つまるところ、人類が抱える難問は、文系では解決不可能ということだ。
じゃあ、文系ってなんだろう?
それは、本当に趣味の延長なのだ。断言できるけど、文系の知識はほぼ100%独学できる。そして、たいそうな時間を消費する価値は、ない。残念ながら。
いま、文系学部廃止の動きが加速している。
議論があり、たくさんの反発もある。
ただ、自分はこうした世の流れに便乗して「文系はオワコン」と言っているのではない。
現在の大学の文系学部は、そこで働く人の地位や収入を確保するだけの機関になっている。文系の教員は、学生達に世界の未来を見せることができない。ビジョンを語れない。それどころか、どのように食べていけばいいかという指針すら与えられない。
若い君たちは、そんなものに4年もの時間を費やし、大金をはたくのか?
自分としてはかなり懸念する。現在の大学の文系学部は、ハローワークの職業訓練校以下だ。(しかも職業訓練校なら、条件次第で無料で学習できる)
3.
もちろん大学名のブランドが就職の役にたつこともある。上京の口実にもなる。
それなら、割り切るのも良い。
けれど、名も無い大学・短大の文系学部で学ぶことは、ほぼ無意味だ。
どうしても好きで好きでたまらない人は、自分で黙々とやって、あとはネットかなにかでサークルでも作ればいいだろう。大学は、これと同じ事をして、目玉が飛び出るような金額を取っているわけだ。
4.
小説は世迷い言の暇つぶしだが、今やアニメや映画のほうが良くできていて面白い。
教養として何か読みたいなら、太宰とか漱石、村上春樹や村上龍、カフカ、ドストエフスキーあたりを読んでおけばいい。個人的にフラバルや乱歩は好きだが、別に読まないでも生きていける。ただ、意外にSFは良いかも知れない。ハインラインとか、クラークとか。
それより、新書や実用書、歴史系のほうがけっこう役立つ。
哲学や思想は、知識として古すぎて、何の有効性もない。そもそも致命的な欠陥がある。どうしても何か読みたいなら、デカルトの『方法序説』、マルクスの『共産党宣言』、それにフーコーあたりを読めばいいだろう。あとは、岩波文庫の『ブッダのことば』やギリシャ哲学関係も少し読めば、もう一生分読んだ、という感じだ。
心理学は本当にひどい。フロイトやユングと、それに派生する心理学者の本は一切読まなくてよい。あれは、大嘘も良いところだ。自分は一時期、心理学科にも在籍したことがあり、継続的に学んできたが、結論はこういう悲惨なものとなった。
…PTSDは、脳科学やアニマルセラピーで解消できるので、カウンセリングや心療内科通いで大金を消費するようなことは避けるべきだ。深い悩みの大半は「金がない」「仕事がない」「モテない」とか、現実的な原因が根底にあるケースがほぼ100%ではないかと思う。
人間関係がうまくいかないのは、単に環境がよくない可能性も高い。つまり、心の問題ではない。過去とか教育の問題ではない。場合によっては、適応障害の可能性もある。適応障害は完全に脳の問題なので、医学的処置以外に解決法はない。つまり、風邪とかと同じ次元の話になってくる。
会計はコンピュータがやるようになるため、税理士・会計士にも未来がない。(あ、でも監査法人とかは別だな…)
今現在やられている方はともかく、10年後、20年後を見越すと、どうなんだろう?
法律も遠くない将来、根本的なアップデートがおこなわれる可能性がある。法哲学や倫理のような文系の基盤から、ビッグデータや生物学、DNAのような理系の基盤に基づいたパラダイム変換だ。そうなると、従来の法学もまた無用の代物になるかもしれない。
5.
↓ 過去のブログでも書いたが、小説が急激につまらなくなっていくのを感じていた。
fromthe30yearsold.hatenablog.com
これがきっかけだった。
芥川は「ぼんやりした不安」で死んだという。
その理由は分からない。
ただ、自分が抱えていた「ぼんやりした不安」の正体はなんとなく分かった。
30歳を目前にしてやっとである。
自分が寄りかかり、親しんできたもの。
それが実は、砂の城だったのだ。沈みゆく船だったのだ。
文系の世界は急速にその力を失いつつある。
芸術分野も同様だ。
けれど悲観することはない。
新しい地平にもまた、エキサイティングなことはたくさんある。
ただ、沈みゆく船に乗り続け、一緒に沈没したらもうどうしようもない。
「いち、抜けた」と言って、ぴょん、と飛び降りてみたら、きっと爽快な気分になるはずだ。
文系や芸術分野は、生涯学習や趣味の領域でこそ生きる。
今後は緩やかに、その流れができてくるだろう。
つまり、純粋なサービス業の分野に収斂し、カルチャーセンターやローカルなコミュニティーで楽しまれてゆくだろう。
ムダだということを認め、学問としての権威もとっぱらったところで、皆が楽しみ、癒やされれば良い。それで充分ではないか、という気がする。「少しだけ人生を豊かにするもの」で良いではないか。受験問題とかにせず、ただ好きな人だけが好きなだけコミットすればいいというだけの話だ。そのような流れの中で、義務教育も根本的にアップデートされ、その意義自体が刷新されるはずだ。
6.
そういえば、ボブディランがこんな歌を歌っていた。
Your old road is
Rapidly agin'.
Please get out of the new one
If you can't lend your hand
For the times they are a-changin'.
(古い道は、過去の遺物になる。
手が貸せないなら、せめて新しい道から退いてくれ。
時代は変わってゆく)
『The Times They Are A-Changin'』より
「フクシマ」を経験した私たちは、新しい道を行くべきだ。
時代は、変わってゆく。