30歳からのブログデビュー

アラサー男があなたに贈る現代版「徒然草」(つれづれぐさ)

「ムハマド・ユヌスの夢」の話(昨日のブログの続き)

1.

 

昨日は、こんなブログを書いた。

今回は、その続きとも言えるかも。

 

fromthe30yearsold.hatenablog.com

 

 

今日は、初めて南の島の図書館に行き、本をいろいろと物色してみた。

 

その中で見つけたのがこの本だ。

貧困のない世界を創る

貧困のない世界を創る

 

 

実は自分は、仕事でヤヌス氏の偉業を書いたことがある。

 

よく知らない方のためにごくザックリ説明すると、ムハマド・ユヌス氏は「マイクロクレジット」(マイクロファイナンス)という、信用による少額貸し出しによって貧困の根絶に大きく貢献した。数字の上でも、ビジネスモデルとしても画期的で、すでに様々な企業の協力によって国際規模の動きになっている。

 

彼は、貧困の根絶を「チャリティ」「ボランティア」ではなく、あくまでも「ビジネス」で達成しようとする。それは、貧困にあえぐ人々が、自発的な小ビジネスをはじめることを意味する。それも、男は基本的にダメで、女性にお金を貸し、ビジネスの元手とさせる。これは、本当に画期的なことだ。

 

実際に彼は、2015年までに祖国バングラデシュの貧困を半分にした。グラミン銀行の創設をはじめ、多くの関連グループ立ち上げにも参加、ノーベル経済学賞も受賞している。今最もアクチュアリーで、具体的なモデルを示している人だ。本当に、死後、どこかの国の紙幣として印刷されるであろう人物である。(その前に、バングラディシュの首相か何かになるべきだと思うが)

 

…ちなみに、日本でこれに近く、しかし実は正反対なビジネスが「消費者金融の無担保少額融資」である。改正貸金業法の施行以来、結構マシな感じにはなっているが「武富士」「商工ローン」とかを、リアルタイムのニュースで見ていた世代からすれば、失笑ものだろう。

 

2.

 

本を読んで、印象に残った部分をご紹介したい。

 

IT革命がもたらす新たな社会は、毎年GDPに追加される大きな額によってのみ特徴付けられているわけではない。

人々や企業が、この技術を用いて蓄積しているのは富ではないのだ。新たなITの素晴らしい貢献は、それが人間同士の新たな関係を作り上げるという一つの根本的事実によってもたらされている。

そして、この変化は必然的に、貧しい人々、特に貧しい女性と子どもたちの人生に、重要な影響力を持つことになるだろう。(p294)

 

 

私は貧困と闘う最も良い方法は、貧しい女性たちに威厳と自立を与えることであると確信している。

ITとマイクロクレジットは非常に効果的にこれをやってのけ、相互に強化しあっている。 (p301)

 

『貧困のない世界を創る』ムハマド・ユヌス早川書房

 

 

彼が創りだしたモデルは、21世紀ならではのタイミングで(技術的側面からも)可能になったものだ。具体的には「IT」(情報技術)の進歩という、巨大なパズルのピースが揃ったということである。

 

実際に、貧困の現場においては、1台の携帯電話(スマホ)が状況を大きく変えることも珍しくない。

 

貧しい人たちにとって、「世界の情報にアクセスできる」ということの意味は、それが当たり前だと思っている私たちよりも遙かに大きく、可能性に満ちている。

 

中間搾取のない市場に開かれ、オープンな教育に開かれ、書物や、映像と言ったコンテンツに開かれ、コストのかからない連絡手段として開かれ、あるいはソーシャルビジネスの足掛かりとして、収入の安定や独立に開かれている。

 

3.

 

ムハマド・ユヌス氏の言うように、貧困は「貧困博物館」でしか見ることのできない、過去の遺物となるだろう。彼のおかげで、その実現が少し早まったのではないか、と思う。

 

それでたぶん、貧困が根にある暴力や紛争は、全てと言わないまでも減るだろう。

 

…私たちの世界は、今ここまで来ている。

人類の歴史が、良い意味でターニングポイントを迎えつつある。

 

そういうことが分かっていると、これからどう働くべきか(何に向けて、何のために働くか)が明確になってくるのではないかと思う。

 

1つのキーワードは、ムハマド・ユヌス氏が現在最も関心を寄せているものの1つである「ソーシャルビジネス」だ。極端な話、利潤はトントンでもいいから「Make a Better Place for You & Me」を目指すと言うことだ。ただし、これは巨大な規模になりがちだし、大企業や富豪などのスポンサーが付かないとなかなか実現は難しい。

 

しかし、グラミン・モデルのように、個人でできる範囲で、その流れに連なることを考える。これなら、誰でもできる。この気持ちがあれば、サラリーマンだって、主婦だって、下手をすれば幼稚園や小学生の子だって「正しい方向」(という言い方はキライだが、あえて言わせてもらいます)に進めるだろう。少なくとも、再起不能なほど、何かで気持ちが折れることはなくなるのではないか。

 

バングラデシュでは、可愛いチビたちを食べさせるために、元手を手にした女性達が、ヨーグルトを売ったり(グラミン・ダノン)、このほか企業から委託された服や商品を売ったりして、一家の大黒柱となって、額に汗して働いている。今日もきっと笑顔で、働いている。これほどの希望があるだろうか?

 

今の時代、個人も企業も、短期的な利益を考えていると、簡単に道を見誤るような気がする。世界には、このようなものすごく巨大で、希望に満ちたイノベーション・動きがある。それを知らない人間だけが視野狭窄に陥って、くだらない犯罪やら、トラブルを起こす。有限な人生を、そんなくだらないことに関わっているヒマはない。そういうくだらないことは、もはや過去の遺物となりつつある。

 

4.

 

実は、ムハマド・ユヌス氏のビジネスモデルは、倫理的な問題にもある種の教訓を教えてくれている。

 

・ 親切は「それを本当に欲している人」に与えなければ意味がない。

・ 一時的な手助け・施しは問題解決につながらない。問題解決には「仕組み」(モデル・ノウハウ)が必要。

 

うーん、21世紀は人間関係やビジネスの意味も変わってきているみたいだ。

 

【重要な追記】

 

夜、ヤヌス氏のインタビューを見た。

 

そうか、ヤヌス氏は、銀行と正反対のことをやったんだ。

 

「持っているから信用する」ではなく、「信用して持たせてやる(貸してやる)」ということをやったんだ。

 

ただ、本当にただこれだけなのに…なんてすごいんだろう。

「ただこれだけのこと」を、誰もできなかったのだ。