旅であった怖い話
1.
旅で怖いのは、幽霊や怪現象ではなく、人間。
結局はそうなるのかもしれない。
今日は、話しかけてきたおじさんと意気投合し、一緒に飲んでいたのだが…。
飲んでる時は、かなり楽しかった。
しかし、結論から言えば、たぶんボラれそうになったのだと思う。(もちろん、ここからは憶測であり、実害は何もなかったのだが)
2.
その人は休職中らしく、見た目はいかつい。
そして、自分の話を色々話してくれた。
現地の人との交流は、やはり楽しい。
しかし、その人はお金がないらしく、自分のお金を当てにしているっぽいことが、なんとなく雰囲気で伝わってきた。
本格的に危機感を覚えたのは、自分を知り合いに紹介し、その人のマンションでこれから飲もう、と言われたときだ。
その後は、うまい理由を言って一応円満に別れたのだが、もしもホイホイ付いていったら…と思うと、ちょっと怖くなった。
非合法のぼったくりバー、監禁…そんな、最悪なシチュエーションが頭をよぎる。
考えすぎかもしれない。
自分のガードが固すぎるのかもしれない。
そもそも、周りが知り合い・親戚だらけのこの島で、見え透いた手口の犯罪が可能なのかも分からない。
しかし、直感的に行かないほうがいい、と思ったのは事実だ。
まあ、飲んでいる時はかなり良い人だったので、気持ちを切り替えて、これからを楽しみたいと思う。
しかし……特定のエリアに関しては、今後は多分近づかないほうが良いだろうと思った。
狭い島なので、その人にバッタリ会ってしまう危険性があるし、その時にまた飲みたいとは、正直思えない。
3.
そのおじさんの正体を考えてみる。
話の内容が全て事実なら、職がなく、お金はないはず。
リストラか、病気による休職か。
現在は、失業保険か、生活保護を受けている可能性も高い。
そして、観光客を特定のお店に案内することで、マージンを受け取っている可能性もある。
そんな人が、自分のように自由に観光してる人(実態は金銭的余裕などなく、カツカツなのだが)を見て、何を思うか。
……分からない。分かるはずもない。
しかし「こいつめ、ちょっと社会勉強させてやる」「痛い目見せてやる」と思っても、不思議はない。
そのおじさんはアクが強く、若干しつこかったが、最終的には自分を解放した。
犯罪スレスレだということを自覚していたのかもしれないし、あるいは最初から全く何の悪意も無かったのかもしれないし……。
4.
観光と、あるいは米軍関係以外に大きな産業がない、南の島。
失業率が高く、一部で貧困の深刻な実態があるというのを何かで読んだことがある。
離婚率も高いというが、やはり経済的な面も関係するのだろう。
それが、美しい海と、のどかな風土の裏に隠されていると思うと、複雑でやるせない気持ちになる。
いい年齢のおじさんが、一回りも年の離れた若者の財布を当てにしなければならない実態。
怒りや情けなさより、やり場のない哀しさを覚えるばかりだ。
だからこそ、というわけではないが、自分は未来に向かって、今にうちにアクションを、起こさなくてはならないのだ。
それが、まだ、、可能なうちに。